バリュー・プロポジション・デザイン:Yves Pigneur (イヴ・ピニュール)

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4月23日に開催された i.school の innotalk(イノトーク)で、Yves Pigneur (イヴ・ピニュール)先生より新著「バリュー・プロポジション・デザイン」のエッセンスをうかがいました。 innotalkでお話し頂くのは二回目ですが、前回同様、軽妙で説得力のあるお話しに引き込まれました。ビジネスモデルキャンバス、バリューマップ、カスタマープロファイルのシートを配り、参加者二人一組で、配られたステッカーをシートに貼ってゆくというイヴ先生のやり方は、とても良いと思います。例題を通じてフレームワークの理解が深まりますし、何より、聴く一方ではなく、身体と頭を動かしてリフレッシュされるので、躍動的な学びの場になります。

実は、私はその作業の時間に、例題として取り上げられた Airbnb(エアビーアンドビー)のアイディアがどのようなワークショッププロセスから生み出されるかを考えていました。Airbnb は世界中に空き部屋などを持つ宿泊場所の提供者(ホスト)と宿泊場所を探している旅行者(ゲスト)をつなぐ、インターネット上のプラットフォームです。Airbnb がまだ存在しない状況を想定して、Airbnb のアイディアが生まれる可能性が高いと思われるワークショッププロセスをデザインするわけです。ちなみに、あるアイディアに接したら、そのアイディアを生み出すことができるワークショッププロセスを考えるというのは、とても有効なトレーニングです。

人工知能研究の第一人者、英国サセックス大学の Margaret Boden 教授は、創造性には combinational creativity, exploratory creativity, transformational creativity の三種類があると主張しておられます。Airbnb は combinational creativity に分類されると思います。

既存のWEBサービスを集めてきて、構造的類似性に基づいてカテゴリー化を行い、その結果に基づいてアイディア発想する。アイディアの領域に 旅行、宿泊などが入っていれば、そして、サービス領域に関する情報・記憶にB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)が含まれていれば、間違いなく Airbnb のアイディアは生まれてくるでしょう。

ビジネスモデルキャンバス、バリューマップ、カスタマープロファイルは素晴らしいツールで、アイディアを評価し、改善するために最も有効です。アイディアを発想する時には、アイディアの発想と評価を繰り返すわけですから、評価のやり方が染みついていれば、アイディア発想にも貢献するはずです。しかし、アイディアを生み出す瞬間には使えないような気がします。アイディアの発想における思考はアブダクション。アイディアの評価は演繹的推論。ビジネスモデルキャンバス、バリューマップ、カスタマープロファイルは演繹的推論を支援する強力なツールです。

イヴ先生とのディスカッションの結論は、i.school メソッドとイヴ先生のフレームワークを組み合わせることが重要だということでした。

 

 

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